完全失業率と休業者数(1)

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20年12月の完全失業率、横ばいの2.9% 総務省「悪い方向」

20年12月の完全失業率、横ばいの2.9% 総務省「悪い方向」

総務省が29日発表した2020年12月の労働力調査によると、完全失業率(季節調整値)は前月比横ばいの2.9%だった。QUICKがまとめた市場予想の中央値(3.0%)を下回った。総務省の担当者は「完全失業率は横ばいだが、就業者数は減少、完全失業者数は増加しており、いずれも悪い方向」との認識を示した。

完全失業者数(同)は前月比6万人増の204万人だった。勤め先などの都合による「非自発的な離職」は前月と同数、自己都合による「自発的な離職」は3万人増、「新たに求職」は1万人増だった。

全体の就業者数(同)は6万人減の6695万人と、20年11月の43万人増から減少に転じた。雇用者数(同)は19万人減の5981万人だった。非労働力人口(同)は4万人減の4154万人だった。

男性の完全失業率(同)は3.1%と0.1ポイント低下した。女性の完全失業率(同)は2.7%と0.3ポイント上昇した。年齢別でもっとも失業率が高かったのが、男性は15~24歳(6.8%)、女性は15~24歳と25~34歳(いずれも4.0%)だった。

同時に発表した20年平均の完全失業率は前の年に比べ0.4ポイント上昇の2.8%だった。上昇はリーマン・ショックの影響が出た09年以来、11年ぶり。うち、男性の完全失業率は3.0%と0.5ポイント上昇した。女性は2.5%と0.3ポイント上昇した。完全失業者数は29万人増の191万人で、11年ぶりに増加した。

20年平均の就業者数は前の年に比べ48万人減の6676万人と8年ぶりに減少した。宿泊業・飲食サービス業が急減するなど、新型コロナウイルスの感染拡大の影響が目立った。就業者数のうち休業者数は、緊急事態宣言発出による経済活動の自粛の影響で80万人増の256万人となった。休業者数は比較可能な1968年以降で過去最多で、増加数も前年での比較が可能な69年以来最多となった。

ー 日本経済新聞 「20年12月の完全失業率、横ばいの2.9% 総務省「悪い方向」」 2021年1月29日 9:33 (2021年1月29日 9:47更新)

独立行政法人労働政策研究・研修機構から

図 新型コロナウイルス感染症関連情報: 新型コロナが雇用・就業・失業に与える影響 国内統計:完全失業率 【参考】リーマンショック前後の動向(2006年~2012年)

引用 独立行政法人労働政策研究・研修機構 > 統計情報 > 新型コロナウイルス感染症関連情報:新型コロナが雇用・就業・失業に与える影響 > 国内統計:完全失業率

図:リーマ前後失業率(季節調整値)

資料出所 総務省統計局「労働力調査(基本集計)」

図 新型コロナウイルス感染症関連情報: 新型コロナが雇用・就業・失業に与える影響 国内統計:完全失業率 完全失業率(季節調整値)

引用 独立行政法人労働政策研究・研修機構 > 統計情報 > 新型コロナウイルス感染症関連情報:新型コロナが雇用・就業・失業に与える影響 > 国内統計:完全失業率

図:完全失業率(季節調整値)の推移

資料出所 総務省統計局「労働力調査(基本集計)」

図 新型コロナウイルス感染症関連情報: 新型コロナが雇用・就業・失業に与える影響 国内統計:休業者数 【参考】リーマンショック前後の動向(2006年~2012年)

引用 独立行政法人労働政策研究・研修機構 > 統計情報 > 新型コロナウイルス感染症関連情報: 新型コロナが雇用・就業・失業に与える影響 > 国内統計:休業者数

図:リーマン時の休業者数(原数値)の推移

図:リーマン時の休業者数(原数値)の推移

総務省統計局「労働力調査(基本集計)」
注 既公表値。
注 東日本大震災の影響により,2011年3月分から8月分までの結果は掲載されていない。

図 新型コロナウイルス感染症関連情報: 新型コロナが雇用・就業・失業に与える影響 国内統計:休業者数 休業者数(原数値)

引用 独立行政法人労働政策研究・研修機構 > 統計情報 > 新型コロナウイルス感染症関連情報: 新型コロナが雇用・就業・失業に与える影響 > 国内統計:休業者数


休業者数(原数値)

休業者数(原数値)

資料出所 総務省統計局「労働力調査(基本集計)」

完全失業者数も休業者数も20年4月が最大値となっていますが、現時点においては、完全失業者数は、リーマンショック後よりも大幅に少ない数字であるのに対し、休業者数は、およそ600万と突出しています。

この現象の理由は、

1.新型コロナウイルスの影響が一時的なものにとどまる、と多くの企業が考えている

おそらく、2020年のうちには、めどがつくだろう・・・、というような期間で、コロナ禍は、収束できるのではないかと考えていたのではないでしょうか。

リーマンショックや東日本大震災のように、影響があった企業の多くが壊滅的な被害を受けた、そして、いつ収束するかわからない、ということであれば、企業もリストラを行い、完全失業者数の方がもっと増えて、休業者数はもっと少なかったかもしれません。
新型コロナの場合、影響範囲は広いですが、直接壊滅的被害は、飲食店や観光業など範囲は限定的です。それ以外の産業では、徐々にダメージを受けている状況です。

コロナウィルスは、ワクチン接種が普及し、感染拡大さえ収まれば、ある程度の期間で、元に戻すことができるかもしれないという考えが社会一般に持たれています。それであれば、いきなり解雇という選択をするのではなく、休業という形で、企業は耐えるという選択をとっていると思われます。

2.企業は、従業員を解雇できない

解雇したくてもできないという事情もあります。厳しくなったコンプライアンスから 企業のモラルも社会から厳しくみられています。
コロナ禍では、政府や自治体は、休業や活動自粛などの「要請」を行いました。要請には、拘束力はなく、自主的な判断に委ねられるものです。その中で、従業員解雇を行うとなれば、「あぁ、あの企業はそんな会社だったのね」、と企業の倫理を問われます。「あの会社、もう危ないんじゃないの」とそのガバナンスも疑われます。

ほかには、企業が雇用を維持しようとする理由として、労働市場の構造的な問題も影響しているのではないかと思います。
30年前も、完全失業率は、3%未満でしたが、新型コロナウイルスの影響を受ける少し前までも同様です。しかし、労働市場は、バブル期以上、戦後の高度成長期なみの有効求人倍率でした。

図 完全失業率、有効求人倍率 1948年~2019年 年平均

引用 独立行政法人労働政策研究・研修機構 > 統計情報 > 早わかり グラフでみる長期労働統計 > Ⅲ 失業 > 図1 完全失業率、有効求人倍率

図1 グラフデータは「表 完全失業率、有効求人倍率(Excel)」を参照。

資料出所  総務省 「労働力調査」  厚生労働省「職業安定業務統計」
注 有効求人倍率の1962年以前は学卒(中卒、高卒)の求人、求職が含まれる。

図14 有効求人倍率、新規求人倍率(四半期平均、季調値 1963年第1四半期~2020年第3四半期)(2020年11月24日更新)

引用 独立行政法人労働政策研究・研修機構  > 統計情報 > 早わかり グラフでみる長期労働統計 > Ⅱ労働力、就業、雇用 > 図14 有効求人倍率、新規求人倍率

図14 グラフデータは「表 有効求人倍率、新規求人倍率(Excel)」を参照。

資料出所
厚生労働省「一般職業紹介状況」、内閣府「景気循環日付」
注1 新規学卒者を除きパートタイムを含む
注2 1973年から沖縄を含む
注3 四半期平均
注4 図中、灰色の期間は、景気の下降局面(山から谷)である。2018年10-12月期の山は暫定。

売り手市場となっている原因はさまざまだと考えられますが、一因は、人口減少と考えられます。日本の総人口においては12年前から、生産年齢人口(15歳以上65歳未満)では、20年以上前から減少しています。人口減少は今後も当面続くことが確実です。新型コロナウイルスの影響で、一時より有効求人倍率は減少しました。しかし、下がったとはいえ直近でも1倍を超えています。求職者1人に対して1件は求人がある状態です。

コロナ禍をのりきることができれば、再び人手不足の状態になる可能性が考えられます。そのような理由から、現状の業績が苦しいくても、雇用を維持し続けておく必要を企業は考えなければならないと思っています。

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